2006年08月21日

夏の風物詩

 暑い!蒸し蒸しする上に虫が飛んでくる。羽虫が大量発生しているらしい。洗濯物にたかっているとか、網戸にはりついているとか、あちこちで羽虫の情報が羽虫のように飛び交っている。桜の季節には毛虫が大発生していたので、梅雨前後のころに白い蝶を白金辺りでもよく見かけたものだ。馴染みのあるモンシロチョウではなく、どうやら見たことのない外来種のようだ。

 こんなに虫が苦手なぼくも、子供の頃はモンシロチョウやトンボなどを手で摘んだりしていた。が、ある時期から一切触れなくなってしまった。都会から虫が排除されて、見慣れないものになったからだろうか。昔は東京でも春になればアゲハチョウが飛び交い、夏には大きな蛾が街灯に群がり、秋になれば風呂場にはコオロギが独唱をサービスしに来てくれたものだ。町の食料品店には必ず粘着性のハエトリ紙があちこちにぶら下がっていた。道には極く自然に犬や馬(!?)の糞があり、そこには必ず銀蝿がたかっていた。食卓にはその銀蝿よけに、白い網の傘のような(名は知らない)ものをかぶせていた。天井にいっぱいいるハエを、細長いガラスの筒にエーテルを仕込んだ不思議な器具で退治していたのは母方の祖父だ。

 虫は外にいる限り風情のある存在である。この世界は虫のために用意されているようなものだ。この時期にセミが鳴かなければ夏の風情はだいなしだし、秋の気配を運んでくるのも虫たちだ。ところが、この連中がひとたび人間の生活圏へ飛び込んでくると困ったことになる。猫は追っかけ、ぼくは逃げる。大雨の前にはセミが避難してくるので気をつけなければいけない。開けた窓のカーテンにじっとへばりついているので、雨が止んだら出てってくれとお願いする。部屋でジージーと鳴かれたら煩くて仕方がない。だが雨が上がればいつのまにか出ていってしまう。あの自慢の羽もやはり雨には弱いんだな。

 蜘蛛も言うことを聞いてくれる不思議な生き物だ。山の宿に泊まれば寝床に大きな蜘蛛がいる。電車の中にだっている。「尊敬さえする貴殿に毛頭恨みはありませんが、その容姿がどうも恐いので、見えない場所に移動してもらえないでしょうか?」とお願いすれば、「そうか、あい分かった」とばかりに、ただちに姿を消してくれるのが蜘蛛の偉いところだ。バリ島のウブドの宿では、寝ようと思ったベッドの上が虫の運動会のようだった。この時もそのリーダーらしき大きな蜘蛛にお願いしたのだが、即座に聞き入れてくれたのだ。しかしバッタはダメだった。どこに飛ぶかわからない虫は聞く耳を持たない。仕方なく部屋を暗くし、懐中電灯で誘導して外に出したものだ。

 蜘蛛に限らず虫には超能力があると思う。ナメクジが空間移動すると言い張るのはミッキー・カーティス翁だったが、小さな虫も空間を瞬間移動するに違いないとぼくも思う。飛んでると思ったら視界から消えてしまう。かつて部屋にいた小さな蜘蛛を捕獲し、遠くの公園まで捨てに行ったことがある。すると数日後には同じ壁の定位置に戻ってるのだ。独特の模様の蜘蛛なので見分けがつく。それが数回続き、蜘蛛は馬鹿にできないと確信したのだ。

 カナブンはセミのようにじっとしてないから落ち着かない。そもそも部屋に飛び込んでくる時から大慌てで壁にぶつかったりするので、音が凄い。部屋の中のどこに飛んでくるかわからないので始末が悪いが、それこそ猫の興味を引く行動なのだ。飛んでいるカナブンを見事にコテーンと叩き落としてイタブリが始まる。実はカナブンは死んだふりをして必死に逃亡の機会を待つのだが、猫はその機会を与えないほど監視が厳しい。そうだ、虫を撃退する専門家が猫なら、この際彼にお任せしようと思った。ところが飛び回らないカナブンには同情が集まる。もう一人の専門家が起きてきて、カナブンをティシュか何かにくるみ、ベランダの外に放り出して救出した。やれやれ、猫はガッカリし、ぼくは晴れ晴れとパソコンに向かう夜中であった。しばらくすると、また同じことが起こった。大慌てのカナブンが壁にぶつかりながら飛び込んできた。バカだなー。あれほど痛い目に合わされた部屋にまた来るとは!そんなアホにはもう同情は無用。こんどこそ撃退専門家は徹底的にやっつけるだろう。

 以前人様からいただいたラベンダー入り枕には大変な目にあった。ハーブにつく小さなアブラムシが大量発生してしまったのだ。小さな茶色の虫は時々は飛び回るが、ほとんど壁にしがみついて動かない。でも部屋の中なので事は深刻だ。害のない虫らしいが、その湧いてくるような「発生力」にやられてしまった。ぼくはその時からアブラムシ・キラーと化し、連中から恐れられている。全滅したはずの虫はこの季節に子孫が誕生しつつあり、また凄惨な事態になりそうだ。中東の争いのようなこの連鎖はいつまで続くのだろうか。皆さん、ハーブにはくれぐれも気をつけて!
posted by admin at 15:47 | quiet voice 2006