2006年09月04日

HOSONO THEATER (3) "Funny Bones"

 6月に渋谷ユーロスペースで企画された「細野劇場」最終日には、音楽からみた「自分のお気に入り映画」をかけることになった。そこであれもいい、この映画もいい、などとあれこれ楽しく候補をあげたのだが、実際は殆どが上映不能だった。映画のシステムは良く知らないが、既に権利が切れていれば上映できない。極く最近のものか、はたまた古典クラス以外は殆ど上映できない、ということが分かってガッカリした。そこで最近見た映画の中で特に音楽的だと感じた「ベルビル・ランデヴー(原題: Les Triplett de Bellville / シルヴァン・ショメ(Sylvain Chomet)2003年作品)」をかけることにしたのだ。DVDもさることながら、この仏アニメーションは劇場で見ると更に素晴らしく、稀に見る音楽的な映画であることを再認識した。

 普段我々は上映権のない映画でもDVDで見ることができる。そういう点では良い時代になったものだ。家に映画館の設備を持つ金持ちはさておき、昔は映画というものは心や記憶に留めておくしかない、幻燈とも言うべきものだった。故にビデオがこの世に登場した時ほど嬉しかったことはない。製作費数十億円というハリウッドの大作を個人で所有することができるようになった。だがそれでもビデオ化されることもなく、二度と出会えない恋人のような映画も多い。DVDをコレクションし過ぎて途方に暮れるような今となっては、昔のように心に留めておくのも良いと思うようになってきている。

 この映画を人々に見せたい、などという欲求は今まで持ったこともなかったが、こういう機会に際し、余り話題にもならず市販もされないが、ずっと気になっている映画を見てもらおうと初めて思った。その映画はピーター・チェルサム(Peter Chelsom:最近作は「セレンディピティー」2001年)作品の「Funny Bones(邦題:骨まで笑って)」(1994)である。ところがこれは上映権がなかった。日本版はDVD化されておらず、となると今ではもうレンタル・ビデオでしか見られない。それもそろそろ消えかかっているに違いない。

 音楽好きのぼくにとってこの映画は重要だ。レイモンド・スコット(Raymond Scott)という破格の天才作曲家を知り得たのも、この映画の各所に使われていたからだ。映画の主題は笑いの探求であり、大喜劇役者(Jerry Lewis)の息子(Oliver Platt)が笑いの才覚に恵まれず、ついに「生まれつきのお笑い芸人(Fanny bones)」の里、イギリスの避暑地でもあるブラックプール(Blackpool)に旅立ち、笑いのネタを仕入れに行く、という話だ。そこに登場する芸人は本物で、リー・エヴァンス(Lee Evans)という若手の才人に加え、ジョージ・カール(George Carle)という名うての芸人のネタを見ることもできる。リー・エヴァンスは芸達者なファニー・ボーンとして、映画の中で「The Radio」というパフォーマンスを見せる。そのシーンだけでも見る価値がある映画だ。柳沢真吾という日本の芸人?に見せたいほど、雰囲気が似ている。エヴァンスはフィフス・エレメンツ(The Fifth Elements〜1997)にも端役で出演している。マウス・ハント(Mouse Hunt〜1997)では主演だが、映画はあまり話題にはならなかった。それよりもTVやカナダのコメディー祭への出演が際立ち、日本で知る機会はほぼ皆無である。ジョージ・カールについてはさらに情報が少ない。かつてTVでサーカス芸のドキュメンタリーに取り上げられていて、その芸にびっくりしたものだ。エド・サリヴァン・ショウのゲストでの演技はかつて衛星放送で見ることができた。その持ちネタで有名なのは、マイクのコードが絡んで大変なことになるというもの。これは今年(2006年)の正月の恒例TV番組、「新春かくし芸大会」で堺正章が完全コピーをしたものが放映された。その際、堺正章はジョージ・カールの芸であることを明言していたのが嬉しかった。ぼくも時々舞台で、ジョージ・カールの「だんだん小さくなってく」という芸をちょこっと披露したりする。そんな希代の芸人が主役級で出ている劇映画、それが「骨まで笑って」なのである。ジョージ・カールはこの映画の5年後、2000年1月にこの世を去ってしまった。

後日談:ずっとこの作品のDVD化を待っていたが未だにその気配がない。ところがビデオ版をポイっとくれた人物がいる。天才的なネット検索能力の持ち主、コシミハルだった。ぼくは飛び上がってヨロコンだのは言うまでもない。

この続きはまた。
「HOSONO THEATER(2)」 を見る
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posted by admin at 15:57 | quiet voice 2006