2006年11月15日

ふれ合い広場

 「もし音楽に臭いがあったらその場から逃げるだろう」
当時の流行音楽をそう皮肉ったのはかのジャン・コクトーだ。ところがここ東京では臭い空気が充満してても、誰も逃げるものはいない。

 白金にある事務所の通りが下水の臭気で大変なことになっている。特に地下にあるスタジオには外からの汚臭が流れ込んできて、日に数度、この攻撃が繰り返され、音楽を作る環境が破壊されつつある。打ち合わせの時間がよく入る夕刻には大抵充満してくるので、仕事への影響は多大だ。先日も美人が来たのに、この汚臭に見舞われて恰好がつかなかった。いや、美人じゃなくたって恰好はつかないんだが、ともかく緊急事態なのだ。

 ここんとこ東京中がこの臭気に見舞われていて、お洒落な街も台無しだ。西麻布、代官山、銀座、白金・・もうどこもかしこも、夏冬に関係なく、四六時中下水から拡散してくる汚物の微粒子。特にひどいのは首都高の銀座から新富町に抜けるトンネルだ。そこを通るたびに車のエアコンを停止し、窓をしっかり閉じるのだが効果なし。臭いの微粒子はどこからでも侵入してくる。そこの臭気と同じくらいひどいのが、事務所前の通りで漂いだしたのだ。

 ビルが増えた頃からこの状態が激しくなったが、下水の許容量を超えているのだろう。こんな臭気が常に漂っている町の交差点あたりを、ぼくはふれ合い広場と呼んでいる。あっちのビルから、こっちのビルから流れ着いたウンウン君が触れ合う場所だ。我々は人との触れ合いを失ってしまったが、地下では分身達が代りに触れ合ってくれているわけだ。

「やあやあ、こんにちわ!最近ここら辺は混雑が激しいねえ、オタクはどちらへ?」
「アタシは多分ずっとここにいるわ・・」

 こんな状態から推察すると、東京は汚物の上に建っているに違いない。その汚水の放つ臭いオーラに我々はマインドコントロールされているんじゃなかろうか。SFの「バーバレラ」に出てくる都市〜ソゴにもそういう邪悪な地下水があったな。だから誰も文句も言わず、平気なんだ。本当に不思議だが「こんな臭いの、もう我慢ならん!」という声を聞いた事が無い。

 お洒落なレストランなどで、たまにこの臭気が充満していることがあるが、従業員も客も平然としているどころか、気取ったりしてるのを見てがく然とする。しばらくいると慣れてきて麻痺するのが嗅覚なんだろうが、こんなことに慣れちゃいけない。

 こんなウンチまみれの都会で五輪を開催するって?都知事は根本的で地道なことを真剣に考えてないな、こりゃ。ぼくはとうとう我慢できなくて、下水の管轄である都になんとかしてもらうつもりだ。ぼくにとっては聖域であるスタジオが環境破壊されたからね。でも、なんとかなるのだろうか・・さもなくば東京脱出しか考えられない。

2006/11/14
posted by admin at 00:00 | quiet voice 2006